漢方処方解説
神仙太乙膏 (しんせんたいつこう)
【処方コンセプト】アトピーや過敏な肌などに多いカユミから、寝たきりの方に起きやすい床ずれまで。
皮膚の炎症をとる生薬と皮膚を潤す生薬からなり、皮膚病に広く使えるのが特徴。アトピー性皮膚炎に多いカユミ、寝たきりの方に起きやすい床ずれ、そのほか切り傷や虫刺され、やけどなどにも使える漢方の軟膏である。
◆『和剤局方』の治瘡腫傷折に「八発癰疽(全身の化膿性腫瘍)、一切の悪瘡軟癤(悪性の腫れ物や毛嚢炎)を治す。年月の深遠を問わず、已に膿を成すにも、未だ膿を成さざるにも、これを貼れば即ち効あり。」とあり、腫れ物の場所を気にせず、発症からの期間や化膿の有無に関わらず使用できる。
◆宋の時代に、広く万能的に使え、優れた効果のあるところから、神仙と名付けられたそうである。現在では皮膚病に幅広く使われている。消炎鎮痛、抗菌の働きに加え、肉芽形成の働きもあり、アトピーに多いカユミ、床ずれ(褥瘡)、やけどなど様々な皮膚病に使える。家庭の常備薬として、ぜひ備えていただきたい漢方軟膏である。
◆元々は瘡癤(そうせつ)(できもの)の薬であり、腫れや化膿に用いられた。薬味構成から患部が乾燥したものでも、浸潤したものでも、どちらの場合にも使用でき、鎮痛効果もある。肉芽形成、患部の清浄効果、制菌作用があり、床ずれによい。
◆本方は寒剤と温剤の配合が巧みであるので、幅広い疾患に応用できる。アトピー性皮膚炎では、特に、発赤して乾燥しているものや、掻くと滲出液が出たり出血するものによい。長期にわたり使用することもできる。
【処方構成】9味
当帰(トウキ)・芍薬(シャクヤク)・地黄(ジオウ)(四物湯去川芎)の補血行血の働きにより血行を改善し患部に栄養を与え、床ずれ(褥瘡)や頑固な湿疹により崩れたお肌を取り戻す。清熱作用のある玄参(ゲンジン)・大黄(ダイオウ)・地黄により炎症を鎮め、化膿を止める。白芷(ビャクシ)・桂皮(ケイヒ)などには発散して湿を取り除く働きがあり、また痛み・カユミにもよい。構成生薬中には、清熱の働きがある薬物が多く、止痛止痒に働き、患部が発赤して熱感を帯び、カユミの強い皮膚病に適している。