漢方処方解説
香砂六君子湯 (こうしゃりっくんしとう)
【処方コンセプト】気うつで食べられない、あるいは食べるとみぞおちがつかえて苦しい方。
このタイプの方は、六君子湯を使いたいような胃腸虚弱タイプで、気力が衰えあるいは気分が沈みがちで、手足が倦怠して、食後眠くなり、みぞおちの痞えが強く、悪心・嘔吐のある方が目標となる。
◆香砂六君子湯は六君子湯(胃腸の機能を高め、消化管の余分な水分を除く)に香附子・縮砂・
藿香(香りが良く、気の巡りを改善し、消化管の余分な水分を除く)の3生薬を加えた処方である。
◆六君子湯の証で、心下痞(みぞおちのつかえ)が強く、気鬱(気の巡りが悪い)の症状があるものに用いる。
◆気鬱の症状には、気分が沈む、気分が塞がる、意気消沈する精神状態などがある。
◆香砂六君子湯は、六君子湯と比べ燥性(余分な水分を除く働き)だけでなく、温性(身体を温める働き)も強化されている。
◆六君子湯タイプで腸内ガスがたまったり、そのために軽い腹痛が起こったり、神経症状が目立ったりするものに良い。
◆六君子湯で食欲が亢進しないような場合、芳香性健胃薬が加わった香り高い香砂六君子湯を用いると良い。
【処方構成】11味
胃腸虚弱で消化管に水分が停滞しやすいタイプに用いる六君子湯(ニンジン・ビャクジュツ・ブクリョウ・カンゾウ・ショウキョウ・タイソウ)に、香附子(コウブシ)、縮砂(シュクシャ)、藿香(カッコウ)の3味を加味した処方である。基本的には六君子湯の方意をもっているが、加味した3味は共に胃腸の機能を高め、気分の塞さがりを開く働きがあり、六君子湯に理気作用を加えた処方といえる。
補気 | 理気 | 化湿 | 安神 | 利水 | 解表 | 補血 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||
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人参 | 黄耆 | 甘草 | 大棗 | 山薬 | 蓮肉 | 陳皮 | 香附子 | 木香 | 半夏 | 桔梗 | 生姜 | 縮砂 | 藿香 | 白扁豆 | 竜眼肉 | 酸棗仁 | 遠志 | 茯苓 | 白朮 | 薏苡 | 柴胡 | 当帰 | 芍薬 | ||
香砂六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 | |||||||||||||
柴芍六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||||||
六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||||||||||
四君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 | ||||||||||||||||||
参苓白朮散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||||||
帰脾湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 12 |
処方名 | 類方鑑別 |
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香砂六君子湯 | 六君子湯タイプでみぞおちが痞えて、気鬱がある方に。 |
柴芍六君子湯 | 六君子湯タイプで胸脇苦満があり、ストレスなどにより痛みが増す方に。 |
六君子湯 | 食べると眠くなり、疲れやすく、朝寝起きの悪い方(脾虚痰飲)。 |
四君子湯 | (脾) 気虚の代表処方(古方では人参湯に匹敵する)。 |
参苓白朮散 | 六君子湯タイプで常に下痢を伴い、食欲がない方。 |
帰脾湯 | 六君子湯タイプに精神安定薬を加えたような方意で、内臓出血にも用いることができる。 |