洗肝明目湯 (せんかんめいもくとう)



【処方コンセプト】炎症による充血、腫れ、疼痛などが顕著な眼病に。

頭部の熱証による目の充血・腫れ・疼痛を目標に、目の急性炎症から慢性化した目の乾燥に至るまで用いることができる
漢方の飲む目薬である。

洗肝明目湯適応症



◆『万病回春』眼目篇に、本方は「一切の風熱、赤腫、疼痛するを治す」とある。 一般には、熱によって目に炎症が生じ、赤く腫れて痛む場合によい。洗肝明目湯タイプの充血というのは、赤味が鮮明で、痛みも強いことが多い。そういうものを目標にすると、 角膜・結膜の急性炎症にも適用できる。
また、強い炎症でなくても炎症が慢性化し、目の 乾燥、痛みが顕著になったドライアイにも効果がある。


◆五行説では、「肝は目に開竅(カイキョウ)す」とあるように、肝は目の働きと関係があり、肝の病変は目に現われると考える。肝の失調 (肝血虚、肝気鬱結、肝火上炎など)では、肝気の流れが停滞することで、目の栄養・潤いが不足するので、 さらに、炎症や熱性が旺盛となり、眼痛や目の充血となって現われる。


◆近年、コンタクトレンズ需要者が増加し、間違った使い方で目に負担をかけてしまうケースが増えている。 また、長時間のパソコン作業が欠かせなくなった現代人は、知らず知らずのうちに、目が疲れ、乾燥し、目が充血することが多い。 本方は、このようなタイプの目の保健薬としても期待できる。


◆洗肝明目湯の名から、肝を洗い清め(気持ちを鎮める)、目を明らかにするという働きが推察できる。また一貫堂では、 竜胆瀉肝湯加減である本方を、解毒証体質者(外界からの刺激により炎症を起こしやすい体質。アレルギー体質など。)の眼病に用いている。


※ベーチェット病などの眼症状で、乾燥・痛みを訴える時にも用いることがある。

【処方構成】19味

慢性炎症に用いる温清飲がベースになっている。当帰・川芎・芍薬・地黄の四物湯で、血を巡らし目を潤す。黄連解毒湯去黄柏と連翹(レンギョウ)・薄荷(ハッカ)・石膏(セッコウ)・桔梗(キキョウ)は上半身の熱を去り、消炎に働く。防風(ボウフウ)・荊芥(ケイガイ)・羗活(キョウカツ)は温めて体表の邪を取り除く。 決明子(ケツメイシ)・蔓荊子(マンケイシ)・菊花(キクカ)・蒺藜子(シツリシ)は消炎あるいは強壮に働いて眼病を去り、甘草(カンゾウ)は諸薬を調和する。また、薄荷と菊花を配合していることで、頭や目の熱を冷ます働きがあり、頭痛や、目の充血や腫痛の治療に効果がある。

洗肝明目湯生薬構成
  解表 利水 清熱 補血 補気 その他 配合生薬数
白芷 薄荷 荊芥 防風 羗活 蔓荊子 菊花 茯苓 灯心草 沢瀉 黄連 黄芩 山梔子 石膏 決明子 牡丹皮 連翹 細茶 当帰 川芎 芍薬 地黄 枸杞子 甘草 山茱萸 山薬 人参 蒺藜子 桔梗
 洗肝明目湯                      19
 滋腎明目湯                       

        15
 杞菊地黄丸                                            8
処方名 類方鑑別
洗肝明目湯 炎症による充血、腫れ、疼痛などが顕著な方に。
滋腎明目湯 老化や過労、目の酷使で、目の充血やかすみ・痛みを 訴える方に。
杞菊地黄丸 老化などが原因で、目の乾き、かすみを強く訴える方に。
類方鑑別



      

▲ このページのトップへ

<< 一覧に戻る