漢方処方解説
延年半夏湯 (えんねんはんげとう)
【処方コンセプト】肩こりがあって、胃が痛む方に。
慢性の胃障害があり、左季肋下部あるいは左乳房下部に疼痛を訴え、左の肩背にかけて凝り痛むものに用いる。現代においては、このようなタイプの胃痛や肩こりに応用されている。
延年半夏湯に関しては、細野史郎先生の研究により、現代風の証(あるいは投与目標)を日本東洋医学会誌に掲載されているので、それを引用させていただくと、
◆慢性の胃障害:胃症状が自覚症状かあるいは他覚症状として証明される。
◆立位時の心窩部圧痛:立った姿勢で剣状突起下部(胸骨の下端に突出する軟骨)に鋭い圧痛点がある。
◆左肩のこり、左背のこりと圧痛:左が痛むのは胃が悪い時に起きることが多い。右は主に肝臓や胆のうの炎症によるもの。
◆足冷え(膝から下、あるいは足首より先):特に足首が冷える。患者本人に足冷えの自覚がなくても、両足首を握ってみると実に冷たく感じる。
◆左腹筋の緊張:古典においては、痃癖(げんぺき)の主方となっている。痃癖とは、左上腹部にずっしりしたしこり(かたまり)を認めるもの。
【処方構成】9味
枳実(キジツ)、柴胡(サイコ)、檳榔子(ビンロウジ)、土鼈甲(ドベッコウ)はいずれも余分な水分を去り、気をめぐらし、痞えや張りを治す。半夏(ハンゲ)は胃内の水分を去り、桔梗(キキョウ)は胸中の痰を除き、呉茱萸(ゴシュユ)はお腹を温め、疝痛を治す。 このように構成生薬の大部分が、気をめぐらし、余分な水分を除き、痞えを治すものである。胃内および胸膈に停滞した水毒、ガスなどによって、凝結・緊張・疼痛を起こしたものを消散させると考えられる。
解表 | 清熱 | 補養 | 理気 | 去痰 | 配合生薬数 | ||||||||||||
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柴胡 | 桂皮 | 生姜 | 黄連 | 黄芩 | 大黄 | 人参 | 甘草 | 大棗 | 芍薬 | 土鼈甲 | 檳榔子 | 枳実 | 半夏 | 桔梗 | 呉茱萸 | ||
延年半夏湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||
大柴胡湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||
柴胡桂枝湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||
半夏瀉心湯 | 乾姜 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 |
処方名 | 類方鑑別 |
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延年半夏湯 | 肩こりがあって、胃が痛む方に。肩こりのほか左側に症状が出やすく、足首の冷えなども。 |
大柴胡湯 | イライラが激しく、胃がはってかたい方で便秘する。肩がこりやすく、締め付けられることを嫌う。 |
柴胡桂枝湯 | イライラして疲れやすい方の胃痛、腹痛に。 |
半夏瀉心湯 | 口臭が気になり、お腹がゴロゴロなる方。 |