漢方処方解説
分消湯 (ぶんしょうとう)
【処方コンセプト】元気がある方の浮腫などによる腹部の膨満感に。
浮腫(あるいは腹水など)の初期で、まだ元気があり、胸腹部に膨満感を訴える方に用いる。腹および脈には力があり、実証のむくみ(実腫)に使うファーストチョイス。体力が低下して虚証に陥らないうちに使用する。
◆ 浮腫には実腫と虚腫があり、「実腫は治りやすく、虚腫は治りにくい」といわれている。さらに虚すれば、不治の病となる。実腫には弾力があって、圧迫した凹みが直ぐに元に戻る。逆に虚腫は戻らない(虚腫には補気建中湯)。
◆ むくみの状態だけでは、虚実を見誤まることもあるので、全身状態の観察も重要。
◆ 腹満、心下痞硬があり、小便はやや減少して濃縮し、大便も秘結する(便秘)ことが多い。腹部膨満感は食後にひどく、腹が張って、ゲップや呑酸があり、少し食べても苦しくなる。
◆ 腹水、浮腫を急激に取り除いても、体力低下を来さない実証に適した利水剤である。
◆ 胸脇苦満があれば、小柴胡湯と合方する。肝硬変による腹水には、この合方が効果的である。
【処方構成】14味
五苓散(-桂皮)に平胃散(-甘草、大棗)を合方して、理気薬の枳実(キジツ)、香附子(コウブシ)、木香(モッコウ)、縮砂(シュクシャ)、大腹皮(ダイフクヒ)、灯心草(トウシンソウ)を加えた処方である。気をめぐらし、食物停滞を改善し、尿利をつけ、主に実証の浮腫を改善する。腹部膨満や腹水、全身浮腫などに用いられる。
利水(化湿) | 補気 | 理気 | 解表 | その他 | 配合生薬数 | |||||||||||||||||||
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茯苓 | 沢瀉 | 猪苓 | 蒼朮 | 白朮 | 縮砂 | 灯心草 | 檳榔子 | 人参 | 甘草 | 厚朴 | 陳皮 | 枳実 | 木香 | 香附子 | 大腹皮 | 蘇葉 | 桂皮 | 生姜 | 呉茱萸 | 麦門冬 | 黄芩 | 大黄 | ||
分消湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 14 | |||||||||
補気建中湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | ||||||||||||||
五苓散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | ||||||||||||||||||
九味檳榔湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 橘 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 |
処方名 | 類方鑑別 |
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分消湯 | 元気がある方の浮腫・腹水(実腫)。実腫のファーストチョイス。 |
補気建中湯 | 元気がない方の浮腫・腹水(虚腫)。虚腫のファーストチョイス。 |
五苓散 | 小便の出が悪くむくむもの。ノドが渇いて水を飲むが、飲んだ以上に水分を吐く、腎臓の炎症による浮腫に小柴胡湯とよく合わせる。 |
九味檳榔湯 | 二便(大便と小便)から水を除く。虚弱者にはあまり向かない。特に足の浮腫によい |