漢方処方解説
茵蔯五苓散 (いんちんごれいさん)
【処方コンセプト】口が渇き、尿量が減り、むくんだり、胸がつかえて吐いたりするタイプに。
このタイプの方は、口が渇き、尿量が減り、むくんだりする時に用いる。また、肝胆に炎症があり、気持ちが悪くて吐いたり、時に黄疸が出ることもある。このような方の二日酔、蕁麻疹(じんましん)などに応用される。
◆五苓散(口渇、尿不利を主訴とする)に茵蔯蒿(利胆作用がある黄疸の要薬)を加えた処方である。
◆一般には脾胃湿熱、肝胆湿熱の肝障害や吐き気(時に黄疸を伴う)などに用いる。
◆湿熱とは、湿邪と熱邪が合わさって起こった複雑な病症のことで、発熱、頭痛、からだが重くて痛む、お腹が張って食欲がない、小便が少なく黄赤色を呈することがある。
◆応用として、湿熱の病症としての二日酔や蕁麻疹にも用いる。
◆湿熱の熱症状が茵蔯蒿湯より弱く、五苓散より強い、また湿症状が五苓散より弱く、茵蔯蒿湯より強い証である。茵蔯五苓散は、臨床では一番用いる機会が多い。
【処方構成】6味
利水の五苓散がベースになって、清熱利湿の茵蔯蒿(インチンコウ)を加えたもの。茵蔯蒿には止痒作用もあり、蕁麻疹をはじめ浮腫を伴う各種の皮膚掻痒症にも効果がある。
清熱 | 瀉下 | 解表 | 利水(化湿) | 補気 | 配合生薬数 | ||||||||||||||
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黄柏 | 山梔子 | 茵蔯蒿 | 黄連 | 黄芩 | 大黄 | 柴胡 | 生姜 | 桂皮 | 茯苓 | 沢瀉 | 猪苓 | 白朮 | 半夏 | 蒼朮 | 人参 | 甘草 | 大棗 | ||
茵蔯五苓散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 | ||||||||||||
五苓散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | |||||||||||||
茵蔯蒿湯 | ○ | ○ | ○ | 3 | |||||||||||||||
梔子柏皮湯 | ○ | ○ | ○ | 3 | |||||||||||||||
黄連解毒湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | ||||||||||||||
柴苓湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 12 |
処方名 | 類方鑑別 |
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茵蔯五苓散 | 五苓散に茵蔯蒿を加味したもの。これにより清熱や利胆の効果が加わる。 |
五苓散 | 口の渇き、尿量減少、浮腫などの症状は共通するが、黄疸などの炎症は伴わない。 |
茵蔯蒿湯 | 口の渇き、尿量減少、浮腫などの症状は共通するが、さらに実証向きで、便秘を伴う。 |
梔子柏皮湯 | 口の渇き、黄疸は共通するが、虚証向きで熱症状が強い者によい。 |
黄連解毒湯 | 熱症状(炎症と充血)が強く、のぼせ、口渇、不眠などを訴えるが、肝胆の炎症の黄疸には適さない。 |
柴苓湯 | 体力中等度で、尿量減少、浮腫などの症状は共通するが、胸脇苦満(季肋部の苦悶および抵抗・圧痛)が顕著。 |