桂枝五物湯 (けいしごもつとう)


【処方コンセプト】歯ぐきの腫れ、口臭のファーストケアに。

桂枝五物湯は、歯槽膿漏で歯ぐきが腫れる・歯が浮く・口臭が気になる、口の粘膜や舌が荒れて痛むなど、口中の急性症状に広く用いることができる。

桂枝五物湯適応症

◆口中の腫れ・痛み・出血・ただれ・発赤など、口中の炎症症状がよい目標となる。


◆本方は、別名を桂枝桔梗湯といい、吉益東洞の愛用した処方である。


◆『勿誤薬室方函』には、「上衝(じょうしょう)、咽喉刺痛、或いは瘡(そう)を生ずる者を治す。東洞曰く、牙歯疼痛する者を治す。南涯曰く、血毒の上に迫る者を治す。その証は牙歯疼痛、両頬腫痛、或いは舌の強ばり痛むなり」とある。


◆血熱、肺・胃腸の熱、乱れた気などが上衝し、体の上部である口中に炎症が出ている病態である。特に飲酒を好むタイプや、入れ歯をしている方は、症状を繰り返しやすい。さらに、歯槽膿漏などは強い口臭の原因となる。


◆山本巌先生は、『東医雑録』に「歯、歯肉、口腔、舌に軽度の炎症があって、そのため頬から顎下にかけて浮腫状に腫れあがっている場合に非常によく効く」と記している。

【処方構成】5味

桂皮は血脈を通じ、茯苓との組み合わせで上逆した気を下降させ、浮腫を除く。桔梗は排膿作用で腫膿を治すとともに、引経薬として薬物の作用を上部に引き上げる。地黄は上焦の湿熱を清する黄芩とともに瘀熱を解し、止血を促す。全体として体の上部の熱を鎮めて、口腔内の炎症を改善することができる。

桂枝五物湯生薬構成
排膿 利水 解表 清熱 補陰 補気 理気 温裏 降逆 配合生薬数
桔梗 茯苓 桂皮 細辛 升麻 防風 黄芩 黄連 竜胆 茵蔯蒿 枇杷葉 地黄 麦門冬 天門冬 石斛 芍薬 甘草 大棗 人参 枳実 乾姜 半夏
桂枝五物湯 5
甘露飲 9
半夏瀉心湯 7
排膿散及湯 生姜 6
立効散 5

処方名 類方鑑別
桂枝五物湯 歯槽膿漏による歯ぐきの腫れ・口臭、口内炎など口中の急性炎症に。
甘露飲 口腔内が乾燥し、慢性に繰り返す口内炎、舌の荒れ・痛み、歯周炎に。
半夏瀉心湯 みぞおちが痞え、悪心・嘔吐、下痢、舌に厚い白苔のあるものの口臭、口内炎に。
排膿散及湯 炎症は顕著でないが、膿が出そうで出ない、あるいは膿が出て、患部がふさがらないものの排膿に。
立効散 化膿や出血が歯ぐき・粘膜など口中全体に及んでいない歯痛や、抜歯後の痛みに。


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