麻子仁丸(ましにんがん)


【処方コンセプト】漢方の便秘薬。コロコロした便が出る方に。

高齢者や病後など体力中等度あるいはやや低下して、排便回数が減り、便が硬く、コロコロした乾燥便が出る方に用いられる。

麻子仁丸適応症

◆『傷寒論』に「趺陽(ふよう)の脈浮にして濇(しょく)、浮なれば則ち胃気強く、濇なれば則ち小便数(さく)、浮濇相搏てば(一緒になり)、大便則ち難く、其の脾約(制約)を為す。麻子仁丸之を主る」とある。

◆適応の病態は腸内乾燥型の便秘である。高齢者や痩せ型の方、発熱・発汗などにより体内の水分が一時的に不足した方は、腸内が乾燥し、水分が少なくなって便秘をしやすくなる。あるいは気虚(アトニー体質等)により腸の蠕動運動が低下すると、腸管から水分が吸収され便が固まり便秘となる。そのような場合に適している。

◆本方は緩和な下剤で、高齢者、産後、病後などの腸燥便秘、習慣性便秘、腸胃燥熱による痔核、肛門術後の便秘、強い下剤では腹が痛んで下りすぎるもの等に応用される。服用法に関して、条文に「知るを以って度と為す(大便が快通する程度に加減して用いる)」とある。

◆本方はほとんど補益の効能がないので、気虚タイプの弛緩性便秘には、六君子湯や補中益気湯等とともに、もともとの体質が陰虚や血虚のタイプには陰や血を補う薬とともに用いるとよい。

【処方構成と効能】6味

麻子仁(マシニン)は杏仁(キョウニン)とともに潤腸通便に働き、杏仁はまた降肺気(肺と大腸は表裏関係)により大腸を通じる。芍薬(シャクヤク)は補血滋潤し麻子仁と杏仁を補佐する。大黄(ダイオウ)・枳実(キジツ)・厚朴(コウボク)は小承気湯で、大黄が瀉下泄熱し、枳実・厚朴の二味で腸管の蠕動を強め、大黄の瀉下作用を助ける。全体では、通便して正気を傷つけない。

麻子仁丸生薬構成
麻子仁丸 潤下 瀉下 行気 養血 活血 清熱 解表 利水 調和 配合生薬数
麻子仁 桔梗 大黄 芒硝 枳実 厚朴 陳皮 芍薬 当帰 川芎 紅花 蘇木 黄芩 山梔子 石膏 桔梗 連翹 防風 荊芥 麻黄 薄荷 生姜 木通 白朮 滑石 甘草
麻子仁丸 6
通導散 10
防風通聖散 18
大黄甘草湯 2
処方名 類方鑑別
麻子仁丸 病後や高齢者で、水分(体液)が不足して便が硬くコロコロしている。
通導散 食欲があって便秘をし、下腹部に圧痛がある。また、月経不順や肥満が気になる。
防風通聖散 口が乾きやすく、よく飲み食いするが便秘しやすい。脂肪太りの肥満タイプ。
大黄甘草湯 便秘の基本処方。どちらかというと実証で便秘する。


      

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