漢方処方解説
環元清血飲 (かんげんせいけついん) (冠心Ⅱ号方の変方)
【処方コンセプト】血の巡りが悪くて、痛みやしびれを訴える方に。
冠心Ⅱ号方は中国中医研究院が開発した活血化瘀剤(血流を改善する薬剤)である。 方名(冠心Ⅱ号方)には狭心症、心筋梗塞など(中国語では冠心病という)の治療薬という意味が込めてある。
◆ 瘀血の代表処方
瘀血とは血の流れが停滞する病態。環元清血飲は大半が活血化瘀薬(血流改善薬)から構成されており、瘀血による諸症状(疼痛、腫塊、出血など)に応用されている。
◆ 臨床応用
① 疼痛(主に頭、肩、胸などの痛み) 漢方では「通(ツウ)ずれば則(スナワ)ち痛(イタ)まず、不通(フツウ)なれば則ち痛む」と言われ、血流が滞って瘀血になれば痛みが発生すると考える。瘀血の痛みは刺痛(針で刺したような)が多く、また、固定性の痛みで部位が移動することは少ない。揉むとかえって痛んだり(拒按という)、夜間(冷えて)に痛みが増す特徴がある。
② 腫塊(しこり) ここでは血が停滞して動かず、定着して形成される腫塊を示す。一般に腹中の腫塊は積聚(シャクジュ)とよばれ、 瘀血による「積」と気滞による「聚」とに区別される。血による「積」は固定して移動せず、おさえると強い痛みがあるという特徴がある。
③ 出血 瘀血による出血は、色が暗紫色で、血塊が混在することも多い。
④ その他 病気や老化の一因とされる活性酸素を除去したり、血栓を溶解する働きがあることから、現代人に多い生活習慣病への効果が期待されている。
【処方構成】6味
丹参(タンジン)は本方の主薬で、芍薬(シャクヤク)、川芎(センキュウ)、紅花(コウカ)の活血(血流改善)作用の生薬とともに血の巡りをよくして、瘀血を改善する。また、「気巡れば血も巡る」といわれるように、気の巡りをよくする木香(モッコウ)・香附子(コウブシ)で活血の働きを助けている。
解表 | 清熱 | 利水 | 瀉下 | 補気 | 理気 | 補血 | 活血 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||||||||
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桂皮 | 防風 | 生姜 | 羌活 | 白芷 | 威霊仙 | 竜胆 | 茯苓 | 防已 | 蒼朮 | 大黄 | 芒硝 | 甘草 | 白朮 | 大棗 | 陳皮 | 枳実 | 烏薬 | 木香 | 香附子 | 当帰 | 芍薬 | 地黄 | 延胡索 | 丹参 | 牛膝 | 桃仁 | 紅花 | 牡丹皮 | 益母草 | 川芎 | ||
環元清血飲 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 | |||||||||||||||||||||||||
疎経活血湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 17 | ||||||||||||||
芎帰調血飲第一加減 | ○ | 乾 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 21 | ||||||||||
桂枝茯苓丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | ||||||||||||||||||||||||||
桃核承気湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 |
処方名 | 類方鑑別 |
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環元清血飲 | 瘀血全般に用いることができるが、上半身の瘀血に繁用される。 |
疎経活血湯 | 手足の痛み、腰痛、関節痛など、経絡、筋骨の瘀血によい。 |
芎帰調血飲第一加減 | 女性の疲れに。イライラして、手足が冷える。産後、術後の瘀血によい。 |
桂枝茯苓丸 | うっ血しやすく、下腹部に痛みを訴える。子宮の瘀血によい。 |
桃核承気湯 | 上記症状で便秘を伴う場合に。胃腸や子宮の瘀血によい。 |