漢方処方解説
苓桂甘棗湯 (りょうけいかんそうとう)
【処方コンセプト】下から突き上げてくるような動悸を訴え、緊張で神経が高ぶる方に。
不安感が非常に強く、人前に出ると緊張してドキドキしたり、ストレスが溜まりやすく イライラしやすい神経質な方の精神不安、動悸などに用いる。
◆へそ下の動悸が第一目標で、これが時に発作的に突き上げたり、胸中が詰まるように感
じたり、腹痛を伴うこともある。
◆上記の病気を漢方では奔豚気病(ほんとんきびょう)という。 現代医学でいうヒステリー性の心悸亢進に相当するもので、発作的に下腹部から胸に衝 き上げてくる激しい動悸(あるいは腹痛)で、胸腹部を子豚が走り回るような感覚があ ることから、このように呼ばれている。驚き・恐れなどの不安に敏感に反応している結果起きると考えられる。
◆このような発作性の心悸亢進(動悸、衝逆)を訴えることから、パニック障害などの不安神経症、神経性心悸亢進症、心臓神経症、ヒステリー、神経衰弱、ノイローゼなどの 精神神経疾患に応用されている。
◆また、胃内停水や消化管の痛みや痙攣を目標に消化器疾患(器質的障害ではなく機能的障害) にも応用されている。
・胃内停水、嘔吐などを訴える胃拡張、胃液分泌過多など
・蠕動亢進や激しい腹痛を訴える胃痙攣、イレウスなど
【処方構成】4味
桂皮(ケイヒ)・甘草(カンゾウ)の組み合わせで気の上衝(過剰にのぼせ上がること)を引き下げ、大棗(タイソウ)は筋肉の緊張、痙攣を主治し、咳、上気、奔豚、煩躁、胸痛、腹痛を治す。茯苓(ブクリョウ)には利水、鎮静、強心の働きがあり、大棗と共に桂皮・甘草を助けて、気の上衝を鎮め、水毒を取り除く。
解表 | 斂肺 | 補気 | 利水 | 疎肝 | 理気 | 駆瘀血 | 安神 | 配合生薬数 | ||||||||||||||
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桂 皮 |
蘇葉 | 生姜 | 五味子 | 甘草 | 大棗 | 黄耆 | 人参 | 茯苓 | 白朮 | 半夏 | 柴胡 | 釣藤鈎 | 陳皮 | 厚朴 | 木香 | 川芎 | 当帰 | 遠志 | 酸棗仁 | 竜眼肉 | ||
苓桂甘棗湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | |||||||||||||||||
苓桂朮甘湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | |||||||||||||||||
○ | ○ | ○ | ○ | 4 | ||||||||||||||||||
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||||||||
帰脾湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 12 | |||||||||
半夏厚朴湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 |
処方名 | 類方鑑別 |
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苓桂甘棗湯 | 神経が高ぶりやすく、臍下の動悸が発作的に胸につきあげてくる(奔豚気病)。 |
苓桂朮甘湯 | 尿の出が悪く、不安感があり、動悸、めまい、立ちくらみがある。 |
苓桂味甘湯 | 顔面紅潮して、頭冒感(頭に何かかぶったような感じ)や咳を訴える。 |
抑肝散加陳皮半夏 | イライラしてストレスを発散できず、神経が高ぶって、怒りっぽい。 |
帰脾湯 | 心配症で、身も心も疲れる方の精神不安、不眠症に。 |
半夏厚朴湯 | 緊張が強くノドに異物感がある方の不安神経症、せき、神経性胃炎に。 |