清心蓮子飲 (せいしんれんしいん)



【処方コンセプト】胃腸が弱い方のストレスなどによる膀胱炎様症状に。

清心蓮子飲は、精神的な疲労によって生じる尿のトラブルによく使用される処方である。 処方名には、「心(シン)」の熱を「清(サ)」ますという
意味が込められている。 漢方でいう「心」は、ストレスや精神の働きと密接であり、イライラすると膀胱炎様の排尿障害を起こしやすい方や、 細かい事が気になって頻繁にトイレに行く方、残尿感が気になる方などによく用いられる。

清心蓮子飲適応症



◆原典の『和剤局方』には「心中蓄積、時常(いつも)に煩躁するに因りて、思慮労力、 憂愁抑鬱し、是れ小便白濁、或いは沙膜有ることを致し」とあり、イライラ(煩熱)や精神的な疲労によって生じる尿のトラブルに用いるとされている。

◆清心蓮子飲は、四君子湯をもとにして組み立てられた方剤であり、平素より胃腸が弱く、五淋散や八味地黄丸など地黄配合剤を用いると、食欲がなくなったり、下痢気味になったりして、胃腸にさわる場合に用いるとよい。

◆神経質の傾向があり、とりこし苦労が多い方によく使われる。ストレスや緊張によって生じる排尿のトラブル(頻繁に尿意を催す、尿が出しぶる、排尿痛がある、排尿時に力がなく残尿感がある、疲れると尿が混濁するなど)が使用目標になる。

◆米のとぎ汁のような帯下(こしけ)、糖尿病で油のような尿が出る場合、血尿がある場合にも応用される。さらに遺精、性的神経衰弱(ED)、自律神経失調症などにも用いられることがある。



【処方構成】9味

清心蓮子飲は、気虚(元気がない、機能低下など)・陰虚(体に潤いがない)に伴う虚熱(イライラ、煩躁など)の状態に使われる処方である。したがって、清熱薬(熱を冷ます)、滋陰薬(体を潤す)、利水薬(水をさばく)、補気健脾薬(気を補い、胃腸を整える)などで構成されている。蓮肉(レンニク)には清心益腎作用(心の熱を冷まし、腎を補う)がある。 麦門冬(バクモンドウ)には滋陰作用(体を潤す)がある。黄芩(オウゴン)は上焦の熱を冷まし、地骨皮(ジコッピ)は虚熱を冷ます働きがある。茯苓(ブクリョウ)と車前子(シャゼンシ)の利水作用により尿の病変を改善する。人参(ニンジン)、黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)は気虚による倦怠感や機能低下の症状を改善する。蓮肉、茯苓には安神作用があるので神経性の尿のトラブルを改善する働きがある。

生薬構成
固渋 清    熱 利  水 滋陰 補  気 補 血 活血 解表 温熱 配合生薬数
蓮肉 黄芩 山梔子 竜胆 黄連 黄柏 連翹 浜防風 地骨皮 茯苓 車前子 沢瀉 木通 滑石 麦門冬 人参 黄耆 甘草 山薬 山茱萸 当帰 芍薬 地黄 牡丹皮 川芎 薄荷 桂皮 附子
  清心蓮子飲   9
  五淋散   11
  竜胆瀉肝湯   16
  八味地黄丸   8
排尿トラブルに使う漢方
処方名 類方鑑別
清心蓮子飲 ストレスなどによる膀胱炎様症状に。胃腸が弱く、地黄剤が飲めない方に。
五淋散 膀胱炎、尿道炎のファーストチョイス。無菌性で神経性のものにも。
竜胆瀉肝湯 痛み、熱感、尿のにごりを伴うタイプ。尿の色が濃い方に。
八味地黄丸 加齢による泌尿器の衰えに。排尿に勢いがなくて、時間がかかる方に。


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