漢方処方解説
清上蠲痛湯 (せいじょうけんつうとう)
【処方コンセプト】頭痛のファーストチョイス。
本方の処方名には、上部(頭部)の鬱熱を清して、痛みをとり去る(蠲には除き去るの意)との意味がある。頭痛なら、かぜをひいた時に起きるものから、原因のわからない片頭痛、群発頭痛などの機能性頭痛にいたるまで、幅広く用いることができる。また、三叉神経痛などの顔面痛にも奏効する。
◆原典の『寿世保元』の頭痛門に「一切の頭痛を治する主方。左右、偏正、新久を問わず皆効あり」とあり、
証を考えずに使ってみてもある一定の効果が期待できる。
◆目がチカチカする。目の周囲から奥の方が痛む。目から来る頭痛には卓効がある(目に目標を絞る)。
◆頭痛のほか、首から上の種々の痛み(三叉神経痛、眼痛、歯痛など)によい。特に、寒冷に誘発される顔面痛によい
(顔色不良、足冷え、夜間悪化)。ヘルペス後の後遺症として起きる三叉神経痛や
上顎洞(副鼻腔)などに出来る腫瘍による痛みにもよい。
◆難治性の頭痛に使ってみる価値がある。一般にはひどい頭痛でなく、常にのぼせ、頭重、気が滅入るものによい。 中年以上の婦人に多い。このような状態にいろいろと工夫して思わしくない時に、本方を用いて著効することがある。 清上蠲痛湯は温知堂の頻用処方のひとつ。
【処方構成】14味
気滞、瘀血、水毒、寒証による頭痛(疼痛)に適する。14味ある薬味のうち、半分の7味が解表薬である。 風と湿を発散する蒼朮(ソウジュツ)、独活(ドクカツ)。血行をよくして痛みを止める当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)。このように処方のほとんどが鎮痛薬であるといってよい。 細辛(サイシン)、防風(ボウフウ)、川芎、白芷(ビャクシ)、羌活(キョウカツ)、独活、蒼朮は皆風を散じ、気を巡らし、水湿を払うもので、麦門冬(バクモンドウ)は気を引き下げ、白芷、菊花(キクカ)、当帰は頭部の血滞を巡らし、 黄芩(オウゴン)は裏熱を清し、細辛、当帰、川芎、生姜(ショウキョウ)は内寒を去る。すなわち、風を去り、気を巡らし、気を引き下げ、水湿を払い、頭部の血滞を巡らし、 そして内寒をとる。
解表 | 補養 | 理気 | 清熱 | 駆瘀血 | 利水 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||
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羗活 | 白芷 | 防風 | 細辛 | 桂皮 | 生姜 | 蔓荊子 | 菊花 | 甘草 | 人参 | 麦門冬 | 半夏 | 陳皮 | 黄芩 | 石膏 | 釣藤鈎 | 川芎 | 当帰 | 茯苓 | 蒼朮 | 猪苓 | 沢瀉 | 独活 | ||
清上蠲痛湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 14 | |||||||||
釣藤散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 | ||||||||||||
五苓散 | ○ | ○ | 白朮 | ○ | ○ | 5 | ||||||||||||||||||
苓桂朮甘湯 | ○ | ○ | ○ | 白朮 | 4 |
処方名 | 類方鑑別 |
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清上蠲痛湯 | 頭痛のファーストチョイス。顔面痛にも。 |
釣藤散 | 高血圧の方の早朝頭痛。 |
五苓散 | 二日酔い、乗り物酔いによる頭痛。 |
苓桂朮甘湯 | めまい、立ちくらみがして、不安感から来る頭痛。 |