【処方コンセプト】熱感を伴う鼻づまりに。蓄膿症、慢性鼻炎。
鼻炎や蓄膿症(副鼻腔炎)が慢性化したもので、鼻粘膜が乾燥し熱感をもち、あるいは鼻茸やポリープができ、鼻づまりが顕著になったものに用いる。乾燥傾向なので鼻水はなく(あっても膿性鼻汁)、嗅覚障害を伴うこともある。
◆本方は、明代の『外科正宗』に掲載された処方で「肺熱によって、鼻の粘膜がきのこ状に、水ぶくれになったもので、初めは榴子(ザクロ)のようだが、日に日に大きくなり、鼻孔を閉塞し、空気の通りの悪くなったものを治す」と記載されている。鼻閉塞、膿性鼻漏、後鼻漏などを目標に、副鼻腔炎、肥厚性鼻炎、慢性鼻炎、鼻ポリープなどに用いられ、急性期の膿性鼻漏には最も適した処方と考えられる。
◆慢性の副鼻腔炎には葛根湯加辛夷川芎が第一選択であるが、効果がなく、熱証が強く疼痛が治まらない者には本方が良い。また、単独で無効の者には、小柴胡湯を合方する。
◆副鼻腔炎が反復、遷延するケースには、本方を継続服用する。
※適応外ではあるが、処方名に「清肺湯」とあるように、潤肺止咳薬が配合されているので、肺熱(咳嗽、痰が黄色い、あるいは痰が少ないなど)・肺燥にも用いられる。例えば、感冒による気管支炎などを治療できる。
【処方構成】9味
辛温解表・通竅作用がある辛夷(シンイ)は、鼻づまりを改善し頭痛を和らげ、膿性鼻汁を軽減させる。黄芩(オウゴン)、山梔子(サンシシ)、知母(チモ)、石膏(セッコウ)、升麻(ショウマ)は清熱解毒で、炎症や熱感を鎮めて化膿を止める。百合(ビャクゴウ)、麦門冬(バクモンドウ)、枇杷葉(ビワヨウ)は潤肺化痰で、枇杷葉は痰を潤して切れやすくし、鎮咳に働く。百合、麦門冬は滋養強壮作用をもち、粘膜を潤して鼻汁や痰の排泄を促す。百合は鎮静・消炎・鎮咳に、麦門冬は解熱・消炎・鎮咳に働く。蓄膿症や慢性鼻炎で、炎症が慢性化して粘膜の萎縮が生じて熱証を起こした状態を改善する。
解表 | 補養 | 清熱 | 理気 | 駆瘀血 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||||||||||||
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升麻 | 柴胡 | 薄荷 | 葛根 | 麻黄 | 桂皮 | 辛夷 | 防風 | 荊芥 | 白芷 | 細辛 | 生姜 | 甘草 | 大棗 | 百合 | 麦門冬 | 五味子 | 黄芩 | 山梔子 | 知母 | 石膏 | 黄連 | 黄柏 | 連翹 | 枇杷葉 | 枳実 | 桔梗 | 半夏 | 当帰 | 芍薬 | 地黄 | 川芎 | ||
辛夷清肺湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||||||||||||||||||
小青竜湯 | ○ | ○ | ○ | 乾 | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||||||||||||||||||
葛根湯加辛夷川芎 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||||||||||||||||||
荊芥連翹湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 17 |
処方名 | 類方鑑別 |
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辛夷清肺湯 | 熱感のある鼻づまり。鼻炎症状が慢性化して、乾燥が進んだもの。鼻を触ると熱感がある。 |
小青竜湯 | 水のような薄い鼻水と痰、あるいは咳が出る方に。 |
葛根湯加辛夷川芎 | 蓄膿症や慢性鼻炎で、鼻の通りが悪くなり、つまるもの。後頭部の痛みを伴うことが多い。 |
荊芥連翹湯 | 皮膚・粘膜が浅黒く過敏な方。熱によるかゆみを伴う慢性鼻炎や蓄膿症に。 |