漢方処方解説
疎経活血湯 (そけいかっけつとう)
【処方コンセプト】腰痛、神経痛に-刺すような痛み、冷え・湿気・夜間に悪化する人。
疎経活血湯は処方名にもあるように、経絡の流れを改善し、血の働きを活発にするという処方。血行を良くして痛みや痺れなどを改善する痺証のファーストチョイスである。 外部から病の原因(風邪(ふうじゃ)・湿邪・寒邪など)が侵入することによって経絡が塞がり痛む場合や、瘀血や血虚で痛む場合に用いられる。
◆この処方は四物湯に桃仁・牛膝(ごしつ)を加え、血の巡りを改善する作用を強化したもの。さらに祛風湿薬(風邪や湿邪を追い払う薬)と利水薬(水の偏在を治す薬)が配合される特徴をもつ。
◆“痛み”に用い、その範囲は腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛と多岐にわたる。とくに腰より下に発した痛みを目標に用いられる。
◆漢方では“痛み”は風邪・湿邪・寒邪などが侵入して経絡が塞がれ、気血の巡りが滞ることで引き起こされると考えられ、それを“痺証(ひしょう)”と呼んでいる。痺証には風痺(ふうひ)・湿痺(しっぴ)・寒痺(かんぴ)などがある。
◆風痺(風邪が原因の痛み)は遊走性の痛み。湿痺(湿邪が原因の痛み)は重だるい固定痛。寒痺(寒邪が原因の痛み)は冷えると悪化し、痛みが強いという特徴がある。疎経活血湯は風に加えて寒湿の病邪をも除去して、血行を促進し、血液の栄養を補うことから、言わば痺証のオールマイティ薬。
◆薬味が多いので切れ味がマイルドなように思われがちだが、実際に使ってみると、痛みに関しては即効性もあり本治(根治療法)はおろか、標治(対症療法)にも充分かなっている。
【処方構成】17味
主薬で祛風湿の防風(ボウフウ)・防已(ボウイ)・和羗活(ワキョウカツ)・威霊仙(イレイセン)・白芷(ビャクシ)が筋肉や関節の痺れ・痛みを去り、蒼朮(ソウジュツ)・茯苓(ブクリョウ)の利水作用で浮腫を除き、活血化瘀の桃仁(トウニン)・牛膝(ゴシツ)で血行を促進し、祛風湿薬の鎮痛作用を助ける。清熱化湿の竜胆(リュウタン)は消炎・鎮痛に働き、補血行血の四物湯で神経・筋肉を滋養して機能の回復を助け、血行を促進する。また、芍薬・甘草(カンゾウ)が筋肉の痙攣を緩めて、陳皮(チンピ)・生姜(ショウキョウ)・甘草で消化力を強めて他薬の吸収をよくする。
解 表 | 利 水 | 清熱 | 駆 瘀 血 | 理 気 | 補 気 | 散寒 | その他 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||
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麻黄 | 桂皮 | 和羗活 | 防風 | 白芷 | 生姜 | 威霊仙 | 防 已 |
蒼朮 | 白朮 | 茯苓 | 竜胆 | 当帰 | 芍薬 | 川芎 | 地黄 | 牛膝 | 桃仁 | 陳皮 | 半夏 | 厚 朴 |
大棗 | 甘草 | 附子 | 杏仁 | ||
疎経活血湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 17 | ||||||||
五 積 散 | ○ | ○ | ○ | 乾 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ 枳殻 |
○ 桔梗 |
○ 香附子 |
○ | ○ | 18 | ||||||||||
麻杏薏甘湯 | ○ | 薏苡仁 | ○ | ○ | 4 | |||||||||||||||||||||
桂枝加朮附湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 | ||||||||||||||||||
防已黄耆湯 | ○ | ○ | ○ | ○ 黄耆 |
○ | 6 | ||||||||||||||||||||
続 命 湯 | ○ | ○ | ○ | 石膏 | ○ | ○ | 人参 | ○ | ○ | 9 |
処方名 | 類方鑑別 |
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疎経活血湯 | 痛みのファーストチョイス。刺すような痛み、冷え・湿気・夜間に悪化する場合。 |
五積散 | さすると痛みが軽くなり、腰やお腹周りを中心に冷えて痛む場合。 |
麻杏薏甘湯 | 外界の冷えからくる急性の痛み。 |
桂枝加朮附湯 | 慢性的に冷えが進行して、むくみがとれないような痛み。 |
続命湯 | 慢性的に熱感のある萎縮性の痛み。 |