漢方処方解説
温清飲 (うんせいいん)
【処方コンセプト】肌の色ツヤが悪く、手足の裏がほてるタイプの湿疹、生理不順、神経症などに。
このタイプの方は、午前中は疲れているわけではないが、仕事や体を動かして午後あるいは夕方から疲れてくる。
疲れると手足の裏がほてり、肌の色ツヤも悪くなり、精神的に興奮しやすく、落ち着きがなくなることが多い。
◆温清飲は、「血虚血熱」の病態から起こる諸症状に用いる。
◆肌の色ツヤが悪く、目がかすむ、手足のしびれなど(血虚)に伴って、のぼせ、イライラ、口渇、目の充血、発疹など(血熱)をきたす。
また、逆に慢性の炎症や出血および脳の充血や自律神経系の興奮(血熱)に、全身的な栄養不良状態(血虚)を伴う。
◆漢方一貫堂医学の解毒証体質(外界からの刺激で炎症を起こしやすい。アレルギー体質など)に用いる荊芥連翹湯、柴胡清肝湯などの処方はこの温清飲がベースになり、アトピー性皮膚炎などの慢性炎症や体質改善によく応用される。
◆肌の色ツヤが悪く、手足の裏がほてるタイプの湿疹、生理不順、神経症などに用いる。
【処方構成】8味
温清飲は、四物湯と黄連解毒湯の合方で、四物湯で内を温め、黄連解毒湯で外の熱を清す(冷やす)意がある。四物湯は、滋養強壮、血液の循環を改善し月経を調整し、鎮痛・鎮静などに働き、体を温めたり、肌をしっとりとさせる。黄連解毒湯は、消炎・解熱・鎮静・止血・利胆・降圧などの作用があり、体を冷やし、熱感や炎症をとる。合方することで、それぞれの処方の寒熱が緩和されて、用いやすくなっている。
解表 | 清熱 | 利水 | 補血 | 駆瘀血 | 理気 | 補気 | 配合生薬数 | ||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
防風 | 荊芥 | 白芷 | 柴胡 | 薄荷 | 蝉退 | 牛蒡子 | 生姜 | 桂皮 | 黄連 | 黄柏 | 黄芩 | 山梔子 | 連翹 | 苦参 | 石膏 | 知母 | 桜皮 | 木通 | 茯苓 | 蒼朮 | 独活 | 当帰 | 芍薬 | 地黄 | 胡麻 | 川芎 | 桃仁 | 牡丹皮 | 桔梗 | 枳実 | 甘草 | ||
温清飲 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||||||||||||||||||
黄連解毒湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | ||||||||||||||||||||||||||||
清上防風湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 12 | ||||||||||||||||||||
荊芥連翹湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 17 | |||||||||||||||
消風散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 13 | |||||||||||||||||||
十味敗毒湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||||||||||||||
桂枝茯苓丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 |
処方名 | 類方鑑別 |
---|---|
温清飲 | 四物湯と黄連解毒湯の合方。慢性炎症に。 |
黄連解毒湯 | のぼせ、精神不安、炎症・出血は強いが、皮膚の栄養不良や乾燥傾向がない。 |
清上防風湯 | のぼせ、熱感はあるが、皮疹が赤く大きく、首から上に多いニキビ。 |
荊芥連翹湯 | 皮膚が浅黒く筋肉質で、温清飲に類似するが、さらにカユミが強い。 |
消風散 | 分泌物が多くベタベタしたり、熱をもって赤くなったり、全身に広がり、カユミが強い。 |
十味敗毒湯 | 発疹が散発性で、時に化膿を伴う炎症のある急性湿疹、じんましん。 |
桂枝茯苓丸 | 瘀血が原因で、下腹部に抵抗・圧痛、のぼせはあるが、逆に手足が冷える。 |