漢方処方解説
温胆湯 (うんたんとう)
【処方コンセプト】あれこれと思い悩む取り越し苦労に。
このタイプの方は、不眠・驚きやすい・憂うつ・不安などの精神的症状のほか、胸やけ・食欲不振などの消化器症状も呈する。
◆痰とは咳嗽時に喀出する痰を指すが、これは狭義の痰。広義の痰は、身体に流れる水が停滞して熱をもち凝集化した結果、粘性化したものを指す。
◆熱と結びついた痰熱は、体内の気血水の循環を滞らせて、不眠・頭痛・めまい・胸やけ・食欲不振を引き起こす。
◆温胆湯は痰熱を除き、痰熱が引き起こす精神症状や消化器症状を改善する。さらに、胆を強めて胆力(決断力)をつける。
◆「胆(キモ)が据わる」という言葉があるくらいで、胆は決断力を主る腑である。胆の機能が虚すると物事にビクビクして、不安を感じるようになる。日常生活の中で一番決断力を有するのは、就寝する時という。よって、胆が虚することは不眠につながる。
【処方構成】7味
燥湿化痰(ソウシツカタン:痰と余分な水分を除く)の二陳湯に清熱化痰(セイネツカタン:痰を除き熱を冷ます)の竹茹(チクジョ)と理気の枳実(キジツ)を配合したもの。 また、見方を変えると、溜飲(食後ゲップや胸やけが多くて、みぞおち辺りが常に気持ち悪い)に用いられる茯苓飲から 補気の人参(ニンジン)・白朮(ビャクジュツ)を去って半夏(ハンゲ)・甘草(カンゾウ)・竹茹(チクジョ)を加えたとも考えられる。このことから気や水の滞りを除き、痰熱を処理することが分かる。
解表 | 清熱 | 補気 | 理気 | 安神 | 利水 | 活血 | 配合生薬数 | |||||||||||||||||
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桂皮 | 生姜 | 防風 | 柴胡 | 菊花 | 大黄 | 黄芩 | 石膏 | 竹筎 | 釣藤鈎 | 人参 | 甘草 | 大棗 | 麦門冬 | 陳皮 | 枳実 | 半夏 | 竜骨 | 牡蛎 | 茯苓 | 白朮 | 当帰 | 川芎 | ||
温胆湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 | ||||||||||||||||
柴胡加竜骨牡蛎湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 | ||||||||||||
抑肝散加陳皮半夏 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | ||||||||||||||
釣藤散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 |
処方名 | 類方鑑別 |
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温胆湯 | 不安で物事が決断できず、不眠が生じる。精神症状が消化器の不調を引き起こしている。 |
柴胡加竜骨牡蛎湯 | イライラ、不安感、動悸があり不眠となる。神経過敏の症状。 |
抑肝散加陳皮半夏 | 疳が高ぶってイライラしているために興奮が収まらない上、血液循環不足があり、眠りにつけない。 |
釣藤散 | イライラを原因とする震えや痙攣を 抑える。高血圧で頭痛やめまいがある方に。 |