• 秋の一般的な養生
  • 秋に多い体のトラブル

日本の秋

日本の秋は、じめじめした梅雨の湿気もなくなり、焼け付くような夏の暑さも終わり、一年中で最もさわやかな季節です。昔から「スポーツの秋」や「食欲の秋」といわれます。秋は生命力をからだの内側にしまいこみ、今までに身に付けたものを発揮する時期で、スポーツの試合や学芸会などの発表会にふさわしい季節といえるでしょう。また、食べ物の少なくなる冬に備えて、実りの秋によく食べてからだに蓄えておくのは、動物本来の本能からきています。

秋は陽の気と陰の気が入れ替わる過渡期で、気候がだんだん寒くなって、日照時間が短くなります。葉が色づいて落ちるため、人々は心の中で物寂しさを感じ、情緒の不安定や感傷的になりやすい憂鬱な気持ちになります。これは乾燥しやすい大気のせいかも知れません。

しかし、秋はすがすがしく、実りの季節でもあります。収穫を喜び、秋のようにさわやかに過ごしたいものです。まもなくやって来る冬を迎えるためにも、このような気持ちが大切です。



漢方の古典「黄帝内経(こうていだいけい)」では、秋になるとすべてのものの形(容)が定(平)まるという意味から、秋の3ヵ月のことを容平(ようへい)と言って、秋の養生法を次のように述べています。

「この季節には、鶏の寝起きのように、早く寝て早く起きることであり、心を安らかにして、くやまず精神を落ち着かせて、秋の気が身体を損なうことのないようにし、やたらと動きまわって、肺を冷やさないようにします。これが秋の季節に調和した養生法であります。

もし、養生法に逆らって、秋の冷えにあたり肺を冷やしたりすると肺を損傷し、冬になって食物を消化しきれずに下痢をしたりします。」

秋というのは物事を仕上げたり整理したりするのにふさわしい季節であり、秋になって何か新しいことを始めようとすると秋の気である肺をいためます。肺に影響するのは冷えだけでなく、秋も深まってくると乾燥の気が盛んになり、ノドや鼻の粘膜や皮膚表面も敏感になってきます。このような燥邪(大気の乾燥)が病因になってきます。

夏の暑い時期には、皮膚の毛穴は開き、発汗や皮膚呼吸により老廃物や水分の代謝が活発になっていますので、咳や鼻炎など呼吸器系に病気を持っている人でも比較的過ごしやすい季節でありますが、秋口に入り、朝晩がめっきり涼しくなってくると、そうはいきません。皮毛が閉じてノドや鼻に負担が掛かってきます。また、秋の乾燥した空気はノドや鼻の粘膜などに炎症を起こします。


秋の一般的な養生

  • 1

    薄着をしない

    気の勢いが外向きから内向きに変わるので、皮膚の防衛力が手薄になります。薄着でからだの熱や水分を逃がしたりして、かぜを引かないように気をつけましょう。汗をかいたらすぐに拭いてください。

  • 2

    激しい運動は
    避ける

    激しい運動でエネルギーの消費や発散を強めては、自然に逆行することになり、来るべき冬に向け健康を維持できなくなります。

  • 3

    憂鬱(ゆううつ)に
    ならない

    心静かに、気持ちをできるだけ平穏に保ち、心配事や悲しみで感傷的にならない。もし、そのような気持ちになったら、カラオケなどで大きな声を出して発散しましょう。

  •  
  • 4

    眠り過ぎない

    長く寝ていると、秋と関係の深い肺気が虚すといわれています。肺(呼吸器)が弱っている人にとって、体を休ませ過ぎることは、気のめぐりをますます悪くします。だからといって、睡眠が不足することも決してよくありません。早寝早起きを心掛けましょう。

  • 5

    燥を潤すものを
    食べる

    ゴマ、もち米、うるち米、ハチミツ、ビワ、パイナップル、乳製品などの柔らかいものを適当に食べたほうがよく、胃を益し、唾液の分泌を促し、からだを潤してくれます。果物は、水分が豊富で潤す働きがあるように思いますが、それ以上に冷やす作用が強いので摂り過ぎには注意が必要です。

  • 6

    旬を食べる

    旬のものはハウスものよりミネラルが豊富で、さつまいも、里芋、じゃがいも、山芋、ごぼう、れんこん、ニンジン、茸、ブロッコリー、カリフラワーなどの秋野菜を積極的に摂りましょう。ほかに、さんま、いわし、さばなどの魚も脂がのっておいしい季節です。


秋に多いからだのトラブル

秋には乾燥(燥邪)による
トラブルに気を付けて

秋には秋特有のトラブルがあります。この時期は乾燥して、大気中の湿気も少なく、その影響が肺を代表とする呼吸器に出てきます。まず、ノド、鼻に。そして皮膚にも影響が及ぶこともあります。さらに漢方の考え(肺は大腸と表裏関係にあり、特に大腸とは密接な関係)からいうと、大腸などの器官にも発展していきます。