当帰飲子 (とうきいんし)



【処方コンセプト】カサカサ乾燥し、かゆい皮膚病に。

当帰飲子は、皮膚が乾燥してかゆみの強い皮膚病に用いる処方である。皮膚がカサカサする。あるいは肥厚してカサブタができる。そのカサブタもボロボロ落ちる。乾燥のため、亀裂が生じることもある。高齢者に多い皮膚瘙痒症にも応用される。

当帰飲子適応症

◆皮膚の症状としては、カユミのほかに、次のような症状を伴う。

① 皮脂や水分の分泌が悪くなって乾燥気味になり、カサカサしてくる。

② 丘疹があっても色に変化のない小丘疹で、先がとがらず扁平なものが多い。

③ 唇も乾燥しやすく、割れ、剥離、色のくすみが見られるようになる。

④ 皮膚の色が何となくくすんできて、汚い感じがする。

⑤ 白い粉を吹いた状態になってくる。

⑥ 寝床に入るとカユミやカサカサが強くなってくる。

⑦ 皮膚の状態は乾燥すると悪化し、潤ってくると改善に向かう。

◆全身症状としては、血虚症状を呈する。

①頭がふらつく、視力が衰え、目がかすむ。

②顔色が何となく悪く、血色のツヤがない、くすんだ感じを受ける

③女性では生理が不順になる

④髪にツヤがなくなり、ツメがもろく、割れたり欠けたりしやすくなる。

【処方構成】10味

本方は血を増やしその働きを高め、血虚を改善する基本処方の四物湯が中心となり、さらに補血の何首烏(カシュウ)が加わり乾燥を潤す。皮膚の乾燥から生じたカユミ(血虚生風ともいう)を止めてくれる蒺藜子(シツリシ)・防風(ボウフウ)・荊芥(ケイガイ)、肺気を補って皮膚機能を高めてくれる黄耆(オウギ)・甘草(カンゾウ)が配合されたものである。つまり四物湯にかゆみ止めを加えたような処方構成になる。

当帰飲子生薬構成
清熱 利水 補気 解表 駆瘀血 理気 配合生薬数
苦参 黄連 黄芩 黄柏 山梔子 連翹 石膏 知母 木通 蒼朮 黄耆 甘草 柴胡 薄荷 蝉退 牛蒡子 白芷 蒺藜子 荊芥 防風 当帰 芍薬 川芎 地黄 何首烏 胡麻 桔梗 枳実
当帰飲子 10
三物黄芩湯 3
黄連解毒湯 4
温清飲 8
荊芥連翹湯 17
消風散 13
処方名 類方鑑別
当帰飲子 炎症は少ないが、カサカサ乾燥して、カユミが強い。
三物黄芩湯 手足がほてり、イライラしてカユミを訴えることが多い。
黄連解毒湯 炎症や充血によるカユミ、ほてり(熱感)に用いる。急性期のものが多く、長期服用には配慮する。
温清飲 肌の色ツヤが悪く、手足がほてる方の慢性炎症に。
荊芥連翹湯 温清飲(黄連解毒湯合四物湯)が含まれているため、慢性の炎症(ほてり、カユミ)や皮膚の栄養状態が悪いものに。
消風散 分泌物が多くベタベタしたり、熱をもって赤くなったり、全身に広がり、カユミが強いものに。


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