漢方処方解説
荊防敗毒散 (けいぼうはいどくさん)
【処方コンセプト】おできの漢方-赤くはれて、化膿して、痛むものに。
このタイプの方は、化膿性の腫れものが全身にできやすく、それが赤く大きくて時に痛むこともある。解表薬(体表の病邪を追い払う生薬)が主薬になっていることから、かぜの初期でノド・気管支に炎症が出てきたものにも応用できる。
◆荊防敗毒散の処方名には「荊芥・防風を主薬とした、化膿などの毒を敗退(しりぞく)
させる散剤」という意味があり、瘡癰(ソウヨウ)(古くから一般に「おでき」といわれているもので、さまざまな化膿性の腫れものをさす)を治療する代表的な処方である。
◆2つの辛温解表薬が主薬になっていることから、病邪が表証にとどまっている皮膚炎(主に初期の化膿性疾患)に用いる処方と考えられる。
◆荊防敗毒散をもとに、華岡青洲が「十味敗毒湯」を創方したことは有名な話である。
◆十味敗毒湯と同様な使い方をするが、解表薬や清熱薬がより多く配合されており、化膿や炎症が強いものに用いることが特徴である。
◆解表薬が多く、鎮咳薬・去痰薬などが含まれていることから、初期の感冒などにも応用されている。
【処方構成】14味
十味敗毒湯から桜皮(オウヒ:主に排膿作用)と生姜(ショウキョウ)を除き、羌活(キョウカツ:辛温解表・止痛)、薄荷(ハッカ:辛涼解表)連翹(レンギョウ:清熱・排膿)、金銀花(キンギンカ:清熱)、枳殻(キコク:理気)、前胡(ゼンコ:鎮咳・去痰)を加えた処方構成になる。解表薬や清熱薬、排膿薬が強化されている。
解表 | 清熱 | 利水 | 補気 | 駆瘀血 | 理気 | 配合生薬数 | ||||||||||||||
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防風 | 荊芥 | 羗活 | 生姜 | 柴胡 | 薄荷 | 黄芩 | 山梔子 | 金銀花 | 連翹 | 前胡 | 茯苓 | 独活 | 大棗 | 甘草 | 芍薬 | 川芎 | 桔梗 | 枳殻 | ||
荊防敗毒散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 14 | |||||
十味敗毒湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||
桜皮 | ||||||||||||||||||||
荊芥連翹湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 17 | ||||||||
白芷 | 黄連,黄芩 | 当帰,地黄 | 枳実 | |||||||||||||||||
排膿散及湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 | |||||||||||||||
桔梗 | 枳実 | |||||||||||||||||||
葛根湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 | |||||||||||||||
麻黄,桂皮,葛根 |
処方名 | 類方鑑別 |
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荊防敗毒散 | 十味敗毒湯の原方で、おできのファーストチョイス。 |
十味敗毒湯 | 化膿の初期あるいはまだ化膿していない皮膚炎に適している。化膿の程度は軽く、痛みも弱い。 |
荊芥連翹湯 | 皮膚の栄養状態が悪くて乾燥している状態。熱がでるとカユミが強くなり炎症を繰り返す。体質改善向き。 |
排膿散及湯 | 化膿性の皮膚炎の代表処方。化膿は軽症のものが多く、解表薬がほとんどないので、発疹やカユミには弱い。 |
葛根湯 | かぜの初期に用いる。発熱・悪寒の全身症状にはよいが、ノドや気管支の炎症には弱い。 |