漢方処方解説
補気建中湯 (ほきけんちゅうとう)
【処方コンセプト】元気がない方の浮腫などによる腹部の膨満感に。
このタイプの方は、元気がなくて、浮腫(あるいは腹水など)で、腹部の膨満感を訴え、食欲もないので、栄養が身に付かず、疲労倦怠を強く訴える方に用いる。
◆補気建中湯は実証の時期(五苓散、柴苓湯、木防已湯などを使う)を過ぎ、慢性に経過した虚証や元気が衰えた方の浮腫(あるいは腹水)に用いる。 実証の浮腫は圧迫してもすぐに陥没が戻ることが多いが、虚証の浮腫は圧迫による陥没がなかなか戻らないことが多い。
◆腹水を起こす疾患には、難治性の疾患(肝臓の疾患)やその末期に多いが、補気建中湯でそのような疾患が簡単に治るというものではなく、つらい腹水をとることで、患者の生活の質(QOL)を高めることができる。
◆腹水を内服薬で改善することで、急激な体力低下を防止して、病気と闘う体力・気力をよみがえらせることが期待できる。
【処方構成】9味
四君子湯と平胃散とを合方して甘草(カンゾウ)を去り、黄芩(オウゴン)、沢瀉(タクシャ)、麦門冬(バクモンドウ)を加えたもので、中を補い小便を利する効果がある。
黄芩は内熱をとり、白朮(ビャクジュツ)、茯苓(ブクリョウ)などの利水作用を助け、厚朴で気をめぐらす。
利水(化湿) | 補気 | 理気 | 駆瘀血 | 温補 | 解表 | その他 | 配合生薬数 | |||||||||||
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茯苓 | 沢瀉 | 猪苓 | 蒼朮 | 白朮 | 人参 | 大棗 | 甘草 | 厚朴 | 陳皮 | 当帰 | 地黄 | 桂皮 | 附子 | 生姜 | 黄芩 | 麦門冬 | ||
補気建中湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | ||||||||
五苓散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | ||||||||||||
八味地黄丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||||||
山薬,山茱萸 | 牡丹皮 | |||||||||||||||||
六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | ||||||||||
半夏 |
処方名 | 類方鑑別 |
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補気建中湯 | 四君子湯と平胃散の合方加減。元気がなく衰弱した方の利水薬。 |
五苓散 | 小便の出が悪くむくむもの。ノドが渇いて水を飲むが、飲んだ以上に水分を吐く、腎臓の異常による浮腫に。 |
八味地黄丸 | 腰から下が冷えて重だるく疲れやすい。冷えのため、夜間たびたびトイレに行くが、思うように出ない。 |
六君子湯 | 食欲がなく疲れやすい。食べると眠くなり、朝起きが悪い。胃腸が衰えて、下痢・軟便になりやすい。 |