漢方処方解説
続命湯 (ぞくめいとう)
【処方コンセプト】手足のしびれや、言葉のもつれのある人。
続命湯は、脳卒中の後遺症でよく現われる言葉のもつれ、手足のしびれなどに用いる処方である。経験的には発作後、服用が早ければ早いほど症状の回復を早めてくれる。社会復帰のためのリハビリには欠かせないものである。
◆ ストレスの多い昨今、肥満や飽食も手伝って高血圧、動脈硬化などの血管障害を引き起こす生活習慣病が増えた。その年齢層も年々若年化する傾向にある。中でも脳卒中は救命治療の発達により、亡くなる人は以前より少なくなったものの、患者数は依然減っていない。とくに脳卒中の後遺症は、運動障害や知覚マヒなどによりQOL(生活の質)を低下させ、認知症や寝たきりにつながるケースもある。
◆ 続命湯は漢方の古典(金匱要略)では「古今録験の続命湯は、中風(チュウフウ:半身不随)、痱(ヒ:麻痺)にて身体自ら収むること能わず(自分で自分の身体を動かすことができない)、口言う能わず(言おうと思っても言葉が出ない)、冒昧(ボウマイ:はっきりしない)にして痛むところを知らず、或いは拘急(コウキュウ:手足がひきつれる)して転側するを得ざる(寝返りもできない)を治す」と記されており、現代でいう脳卒中の後遺症によいこと(漢方の飲むリハビリ薬)がわかる。
◆ 最近の脳卒中の傾向として、脳出血より脳梗塞の方が多くなっている。脳梗塞で血流が悪くなったタイプには続命湯が適する。
※次のようなケースにも用いられている。
*卒中発作後に身体が思い通りにならないため、うつ症状を起こしやすい方。
*糖尿病でヘモグロビンA1cの高い方。
*咳や喘息のある方。(処方の中に麻杏甘石湯が含まれている)
【処方構成】9味
当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)、桂皮(ケイヒ)の3つが主薬で、脳や手足をはじめ全身の血液循環の改善、しびれやマヒ感、言葉のもつれを除く作用がある。それに麻黄(マオウ)と石膏(セッコウ)の組み合わせによる利水作用で、浮腫を去り主薬の血液循環の改善を助ける。また、人参(ニンジン)、甘草(カンゾウ)、生姜(ショウキョウ)の3つは補気薬で、消化吸収力をよくして、全身の運動能力を高め、杏仁(キョウニン)の止咳去痰で、言葉のもつれの改善に協力する作用が加わっている。血液循環の改善、利水消腫、補気、止咳去痰などにより、手足のしびれや言葉のもつれを改善する。
補気 | 利水 | 理気 | 解表 | 清熱 | 補血 | 活血 | 他 | 配合生薬数 | |||||||||||||||||
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人参 | 甘草 | 黄耆 | 大棗 | 麦門冬 | 茯苓 | 蒼朮 | 陳皮 | 半夏 | 杏仁 | 麻黄 | 桂皮 | 生姜 | 防風 | 菊花 | 釣藤鈎 | 石膏 | 当帰 | 芍薬 | 川芎 | 紅花 | 桃仁 | 地竜 | 炮附子 | ||
続命湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | |||||||||||||||
補陽還五湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 | |||||||||||||||||
釣藤散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 | |||||||||||||
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 |
処方名 | 類方鑑別 |
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続命湯 | 脳卒中で倒れて、手足のしびれや言葉のもつれがある方に。また、その前兆がある方にも。 |
補陽還五湯 | 脳卒中後遺症で、体力が落ちて、慢性化した方に。 |
釣藤散 | 血圧が高く、頭痛持ちで、ストレスにより血圧が上昇しやすい方の精神安定に。 |
桂枝加朮附湯 | 衰弱がひどく、体が冷え、体の自由がきかず、大小便を失禁しやすい方に。 |