【処方コンセプト】汗をよくかき、疲れやすくて、風邪をひきやすい方。
この処方名のキーワードは、屏風(びょうぶ)という言葉である。屏風は壁のように完全にものを遮断してしまうのではなくて、必要なものを通過させ、入ってはならないものをくい止める働きがある。頭に玉(ぎょく:宝飾品などの意味)がついているのは、大変貴重なものという意味。屏風で(免疫力で)外からの邪を防ぎ、外的要因から身体をしっかり守る薬と考えられる。
◆皮膚の表面には衛気(えき)という気(エネルギー)が流れ、体表をしっかりガードしていると考える。
◆玉屏風散はその衛気が不足した状態に適する処方。衛気が不足すると汗をかきやすくなるほか、 外邪に対する防衛力が落ちて、風邪をひきやすくなったり、なかなか治らずに長引いたりする。 温度変化にも順応しにくいため、少しの温度変化でクシャミ、鼻水などのアレルギー症状も現れてくる。
◆自汗があり悪風を感じ、風邪をひきやすく顔色が蒼白い。また、疲れやすい、むくみやすい、尿量が少ない、手足が冷えやすいなどの症状もみられる。 病気が進むにつれて、発熱、頭痛、浮腫、水様鼻汁、肌のカユミなどが現れることもある。
◆玉屏風散や桂枝湯は、体表のバリアが弱って、昼間でも汗をかく場合によい。陰虚(体に潤いがない)から生じたほてりが、 夜中に汗を押し出し、寝汗となる場合には六味丸を用いる。
◆かぜや気管支炎、慢性鼻炎、花粉症、慢性蕁麻疹、喘息の長期管理などに応用されている。
【処方構成】3味
2味の補気薬と1味の袪風薬(風邪を追い払う)で構成され、主薬の黄耆(オウギ)と白朮(ビャクジュツ)で、肺と脾の気を補い、増強する。とくに肺気が充実され、体表部を固摂する機能が回復すると、汗腺の開閉も正常になり、異常な汗は止まる。少量の防風(ボウフウ)を配合して、風邪の侵入を防ぎ、かぜなどの感染症を未然に防止する。 まさに漢方の治療原則の扶正袪邪(抵抗力を高めて、病原菌を寄せつけない)に基づいた配合である。
解 表 | 利 水 | 補 気 | 補 血 | 理気 | 活血 | 配合生薬数 | |||||||||||||||
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防風 | 桂皮 | 生姜 | 柴胡 | 升麻 | 茯苓 | 沢瀉 | 防已 | 白朮 | 山薬 | 甘草 | 黄耆 | 人参 | 大棗 | 山茱萸 | 当帰 | 芍薬 | 地黄 | 陳皮 | 牡丹皮 | ||
玉屏風散 | ○ | ○ | ○ | 3 | |||||||||||||||||
桂枝湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | |||||||||||||||
防已黄耆湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 | ||||||||||||||
補中益気湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||
六味丸 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 6 |
処方名 | 類方鑑別 |
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玉屏風散 | 衛気虚(免疫低下)の代表処方。かぜをひきやすい方に。 |
桂枝湯 | かぜの初期で発熱・痛みがある。気が上衝する方に。 |
防已黄耆湯 | 上記の2処方と同じく表虚で自汗する。下半身に水が溜まり体が重い。 |
補中益気湯 | 日頃から疲労し表裏とも気虚。全身機能を高める体力増強剤。 |
六味丸 | 寝汗の原因が陰虚にあるとき。潤いが不足し、ほてり・排尿障害も。 |