黄耆建中湯 (おうぎけんちゅうとう)


 

【処方コンセプト】衰弱して、とにかく疲れやすく、よく腹痛を訴える方に。

 

ベースに消化器の機能低下があり、体力がかなり衰えていて、すぐに寝込んでしまう。また、年中風邪をひいているかのようなだるさを感じ、少し動いただけでも息切れがして、すぐに汗をかいてしまう(寝汗含む)ような方に適している。寝たきりで衰弱していて、床ずれを起こしている方にもよい。

黄耆建中湯適応症

◆体の深部(消化器など)の気を補って腹部を温め消化器機能を高める小建中湯に、体表の気を増して皮膚のしまりをよくする黄耆を合わせたもの。表と裏の両方の気を補うので虚労(体力低下状態)の方に適した処方構成となっている。

◆小建中湯証の腹中急痛(緊張と冷えのために腹が痛む)に、自汗・息切れ・冷え・疲労倦怠感などの気虚の症状がより顕著なものを目標に用いる。また、汗をかいた後に冷えて下痢をしてしまう方や風邪をひきやすい方にもよい。

◆黄耆の配合量が多いので、皮膚の栄養を高め肉芽の発生を促進し、化膿を止め、皮膚の諸症状(寝汗、湿疹、床ずれなど)を改善する。

【処方構成】7味

本方は小建中湯に黄耆(オウギ)を加えた処方。小建中湯より気虚の状態が進んだものに用いる。消化器の気を補う甘草(カンゾウ)・膠飴(コウイ)・大棗(タイソウ)に、体を温める桂皮(ケイヒ)・生姜(ショウキョウ)、補血をして鎮痙(痙攣を止める)する芍薬(シャクヤク)で構成された小建中湯に、表の気を補う黄耆が加わっているので、皮膚のしまりをよくして汗を止め、肉芽の発生を促進し、栄養を与える。これらの生薬構成により体表および体の深部(消化器など)の気を補う。

黄耆建中湯生薬構成
  解表 補気 理気 補血 利水 配合生薬数
桂皮 生姜 防風 柴胡 升麻 黄耆 甘草 大棗 人参 膠飴 陳皮 当帰 芍薬 白朮 防已
黄耆建中湯                 7
桂枝加黄耆湯                   6
玉屏風散                         3
補中益気湯           10
防已黄耆湯                   6

処方名 類方鑑別
黄耆建中湯 体力が衰弱して、疲れやすく、腹部が緊張と冷えのために痛み、汗をかきやすい。
桂枝加黄耆湯 虚弱体質で肌のしまりが悪く、ジメジメした寝汗をよくかく。消化器症状は目立たない。
玉屏風散 虚弱体質で、免疫力が低下しているので、風邪をひきやすく、汗をかきやすい。消化器症状は目立たない。
補中益気湯 疲れやすくて、手足がだるく、食欲がない。術後の体力増強にも。
防已黄耆湯 汗をかきやすく、下半身に水が溜まり、重だるく、むくみやすい。消化器症状は目立たない。



      

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