柴胡疎肝湯 (さいこそかんとう)



【処方コンセプト】ストレスにより、胸脇や腹などが張るように痛む方。

四逆散(柴胡、芍薬、枳実、甘草)の加味剤のひとつで、肝気鬱結に用いる代表的な処方である。胸脇部の張った痛み、胸部や腹部の遊走性の痛み、胸苦しさなどを訴え、女性では生理にトラブルが発生しやすいのが特徴である。とにかく不定愁訴が多く、その痛みも機能亢進によるものである。

柴胡疎肝湯適応症



◆肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。


◆柴胡+芍薬の薬対が含まれる本方には疏肝解鬱(抗ストレス)作用がある。 精神的ストレスによる感情の起伏は、多くの病気の原因や増悪因子となることもある。逆に、さまざまな慢性病は感情の抑うつをもたらす。


◆機能亢進により、実際に肝臓や胆嚢(あるいは胃腸や膵臓)に炎症が起きるなどして痛みが顕著な時にも用いる。膵炎や胆石による腹痛、脾湾曲症候群(大腸の一番高いところにガスが溜まって左側の腹が痛む)による痛みなどにも応用されている。ほかに肋間神経痛、腫瘍による痛み、肩の強ばり、頭痛などにも応用される。


◆本方は四逆散の加味方なので脇痛だけでなく、四逆散タイプで肝気が胸脇部で詰まって痛みがあり、あるいは衝逆(つきあがる)して頭痛や肩背が強ばるものによい。四逆散より気の鬱滞が強く、胸、脇、腹が痛むものに使われる。

【処方構成】7味

本方は四逆散に川芎(センキュウ)、香附子(コウブシ)、青皮(セイヒ)を加えたもの。柴胡(サイコ)・芍薬(シャクヤク)で肝気が上昇するのを防ぎ、川芎は体を温めて血行を高め、香附子・枳実(キジツ)は気を調え運行をよくし、甘草(カンゾウ)は芍薬や香附子と協力して鎮痛作用を増強する。 これに気滞を改善し左脇痛(膵炎による痛みなど)によく使われる青皮を加えたものである。

柴胡疎肝湯生薬構成

  解表 清熱 補養 利水 去痰 理気 駆瘀血 配合生薬数
柴胡 薄荷 桂皮 生姜 黄芩 山梔子 牡丹皮 甘草 大棗 土鼈甲 人参 茯苓 白朮 桔梗 半夏 陳皮 檳榔子 枳実 青皮 香附子 川芎 当帰 芍薬 呉茱萸
柴胡疎肝湯                                   7
柴芍六君子湯                             10
柴胡桂枝湯                               9
加味逍遙散                             10
延年半夏湯                               9
処方名 類方鑑別
柴胡疎肝湯 ストレスにより、胸脇や腹などが張るように痛む方に。
柴芍六君子湯 胃腸虚弱で、食べるとお腹がすぐに一杯になる方の胃痛・腹痛に。
柴胡桂枝湯 イライラして、疲れやすい方の胃痛、腹痛に。肩こり、食欲不振も伴う。
加味逍遙散 神経を使うため、何となくイライラしてのぼせる方に。
延年半夏湯 肩こりがあって、胃が痛む方に。肩こりのほか左側に症状がでやすく、足首の冷えなどもある。


      

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