漢方処方解説
柴芍六君子湯 (さいしゃくりっくんしとう)
【処方コンセプト】胃腸虚弱で、みぞおちから両脇にかけて一杯になる方の胃痛・腹痛に。
このタイプは、六君子湯を使いたいような胃腸虚弱で、みぞおちから両脇にかけてが一杯になったような感じか、重苦しい感じがあり、神経質な方が目標となる。
◆柴芍六君子湯は、六君子湯(胃腸の機能を補い、水をさばく)に柴胡・芍薬(肝の気を巡らせ、痛みを止める)の2生薬を加えた処方である。
◆六君子湯の証で、胸脇苦満(みぞおちから両脇にかけて張る)し、腹直筋の攣急がみられるものに用いる。ただし、この胸脇苦満は軽い。
◆柴胡桂枝湯や四逆散を用いたいようなタイプで、しかも胃内停水が著明で、体力が弱いものによい。
◆肝実脾虚(神経興奮して種々の症状があり、かつ消化機能の低下した状態)の証に用いる。
◆消化力が低下して食欲が減退し、少し多く食べると下痢したり、下腹部が張って苦しくなり、貧血気味で、手足が冷えやすく尿量も多いタイプで、腹直筋や胸脇部の筋肉拘攣や腹痛を伴うもので、気のあせりのあるような方に用いる。 また、ストレスの影響で胃腸の調子が悪くなるものによい。
【処方構成】10味
脾虚痰飲(胃腸の機能を補い、水をさばく)の六君子湯に、柴胡(サイコ)、芍薬(シャクヤク)の2味を加味した処方である。基本的には六君子湯の方意をもっているが、加味した2味は疏肝解鬱(肝の気を巡らせストレスの影響を軽減する)の柴胡と柔肝止痛(筋肉の緊張を和らげ、痛みを止める)の芍薬であり、ストレスなどが加わることにより、痛みを伴う消化器疾患によく奏功する。六君子湯に鎮痛作用を考慮した処方といえる。
補気 | 理気 | 解表 | 化湿 | 利水 | 補血 | 配合生薬数 | ||||||||||||||
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人参 | 甘草 | 大棗 | 山薬 | 蓮肉 | 陳皮 | 香附子 | 木香 | 半夏 | 桔梗 | 柴胡 | 生姜 | 縮砂 | 藿香 | 扁豆 | 茯苓 | 白朮 | 薏苡仁 | 芍薬 | ||
柴芍六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | |||||||||
香砂六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 11 | ||||||||
六君子湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 8 | |||||||||||
参苓白朮散料 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 |
処方名 | 類方鑑別 |
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柴芍六君子湯 | 六君子湯タイプで胸脇苦満があり、ストレスなどにより痛みが増す方に。 |
香砂六君子湯 | 六君子湯タイプでみぞおちが痞えて、気鬱があって食べられない方に。 |
六君子湯 | 食べると眠くなり、疲れやすく、朝寝起きの悪い方(脾虚痰飲)。 |
参苓白朮散料 | 六君子湯タイプで常に下痢を伴い、食欲がない方。 |