三物黄芩湯 (さんもつおうごんとう)



【処方コンセプト】手足がほてり、肌が乾き、イライラやカユミを訴える人。

このタイプの方は、手掌や足の裏がほてって気持ちが悪い(四肢煩熱)と訴える事が多く、そのほてりが、皮膚のカユミや子宮周辺の炎症として現われ、時には上半身を侵し、いやな熱感をもたらし、精神状態にも影響する。

三物黄芩湯適応症

◆ 三物黄芩湯は、元来「婦人草蓐〈ソウジョク〉(産褥〈サンジョク〉)で煩熱するもの」に対する処方であるが、陰虚火旺、血熱に用いる処方である。

◆ 陰虚火旺(陰虚内熱)とは、からだの潤い物質(陰液)が減少し、体内の熱(エネルギー)が亢進した状態である。 このため、口渇や手足のほてりを伴う皮膚疾患(皮膚の紅潮や掻痒感が強い)をはじめ、更年期障害や自律神経失調症、不眠症といった精神神経疾患にも応用される。

◆ 血熱とは血に熱邪が侵入するために現れる病態。熱感、出血あるいは発疹を訴え、産後や生理中に起きることが多い。女性の生理では、その周期が早まるのが特徴。

◆ もともとご婦人の産褥熱に用いていたが、現在ではトリコモナス膣炎や白鮮症などのカユミに用いることが多い。

【処方構成】3味

地黄(ジオウ)は滋潤の働きによってからだの不足した血液・水分を補う(血熱をさます)。黄芩(オウゴン)は優れた清熱作用をもち、滋陰作用のある地黄と配合する事で、血熱をさます働きが強化される。苦参(クジン)も清熱燥湿の作用をもち、黄芩・地黄の働きを補佐する。また、地黄の滋陰作用が黄芩・苦参の燥性を抑える。苦味の苦参と滋潤性のある地黄は胃にもたれることがあるので、胃腸虚弱者の長期使用には注意する。

三物黄芩湯生薬構成
清熱 利水 補気 解表 駆瘀血 その他 配合生薬数
苦参 黄芩 山梔子 黄連 黄柏 連翹 茯苓 半夏 桔梗 白朮 人参 甘草 大棗 柴胡 薄荷 白芷 荊芥 防風 生姜 桂皮 当帰 芍薬 地黄 川芎 牡丹皮 桃仁 粳米 麦門冬 枳実
三物黄芩湯 3
黄連解毒湯 4
荊芥連翹湯 17
加味逍遙散 10
桂枝茯苓丸 5
麦門冬湯 6
処方名 類方鑑別
三物黄芩湯 手足がほてり、イライラやカユミを訴える。
黄連解毒湯 炎症や充血によるカユミ、ほてり(熱感)に用いる。急性期のものが多く、長期服用には配慮する。
荊芥連翹湯 温清飲(黄連解毒湯合四物湯)が含まれているため、慢性の炎症(ほてり、カユミ)や皮膚の栄養状態が悪いものに。
加味逍遙散 イライラして怒りっぽい。自律神経系が乱れて興奮しやすく、頭がほてって、いろいろな神経症状が出る。
桂枝茯苓丸 瘀血(血液の循環不良)による冷えのぼせ。上半身がほてったり、のぼせたりするが、逆に手足は冷える。
麦門冬湯 体内の水分が減り、口が渇き、乾燥のため特に気道の流通が悪くなり、呼吸が苦しくなって、そのためにむせたり、のぼせたりする。


      

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