漢方処方解説
抑肝散加陳皮半夏 (よくかんさんかちんぴはんげ)
【処方コンセプト】ストレスの発散ができず、神経が高ぶるタイプ。
このタイプの方は、イライラして、十分にストレスを発散できない。そのため、貧乏ゆすりやチック、登校前や出勤前になると腹痛や頭痛が起こる。ストレスの多い中間管理職や受験生の精神安定剤としても応用されている。
◆抑肝散は、元来は「小児のひきつけ」に対する処方であった。 陳皮と半夏を加味することで、二陳湯(去生姜)の方意も加わり、悪心・嘔吐、腹部膨満感などを伴う胃弱の方でも気軽に服用できる。
◆気虚(体力低下)・血虚(栄養低下)のために、ストレスに対する抵抗性が低下し、軽度な精神的・肉体的な刺激に対しても反応性が高まった状態で、自律神経系の失調を伴った状態によい。
◆肝気が高ぶって、肝気が過剰に動く病態の諸症状に用いる。
◆肝陽化風では、興奮によって生じる手足のふるえ、筋肉のけいれん、歯ぎしり、ちょっとした物音にビクッとして眠れないなどの症状が現れる。
【処方構成】9味
釣藤鈎(チョウトウコウ)、柴胡(サイコ)は、鎮静・鎮痙作用を持ち自律神経系を調整し、また釣藤鈎にはてんかん発作を抑制し、強い抗痙攣と降圧の働きもある(平肝熄風)。当帰(トウキ)、川芎(センキュウ)は滋潤強壮で体を栄養し、血液の循環をよくし、川芎は頭痛にも奏効する。茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、白朮(ビャクジュツ)は消化吸収を強め、全身の機能を強化し、また茯苓には鎮静の働きがあり、白朮とともに、からだの余剰水分を利尿により排泄する。さらに陳皮(チンピ)、半夏(ハンゲ)は悪心・嘔吐を鎮め、腹部の膨満感を除く作用がある。
駆瘀血 | 清熱 | 利水 | 補 気 |
理気 | 解表 | 配合生薬数 | |||||||||||||||||
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当帰 | 川芎 | 牡丹皮 | 芍薬 | 柴胡 | 釣藤鈎 | 山梔子 | 黄連 | 黄芩 | 黄柏 | 薄荷 | 竹筎 | 茯苓 | 半夏 | 白朮 | 甘草 | 陳皮 | 厚朴 | 枳実 | 蘇葉 | 桂皮 | 生姜 | ||
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 9 | ||||||||||||||
黄連解毒湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | ||||||||||||||||||
加味逍遙散 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 10 | ||||||||||||
苓桂朮甘湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | 4 | ||||||||||||||||||
半夏厚朴湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 5 | |||||||||||||||||
温胆湯 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | 7 |
処方名 | 類方鑑別 |
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抑肝散加陳皮半夏 | |
黄連解毒湯 | 顔がのぼせ、熱感で落ち着かない。ノドも渇き、全身に冷えは感じない。熱によるイライラで夜も眠れない。 |
加味逍遙散 | 神経を使い過ぎた結果、疲れて何となくイライラするタイプの自律神経失調症、更年期障害に。 |
苓桂朮甘湯 | 水分代謝が悪いため、体が重くて疲れやすい。食欲不振やめまい、ふらつき(立ちくらみ)や不安・動悸といった症状を伴う。 |
半夏厚朴湯 | 緊張が続く環境にいると、そのためにノドや胸部のつかえ(梅核気)を訴える。うすい痰がでるため、よく咳払いをする。 |
温胆湯 | 物事にビクビクする、不安感、決断に迷うといった精神状態の不眠症に。また、胃下垂、胃アトニーなどで胃腸機能が弱い方の神経症にも。 |